まごころの連鎖

月が変わるたび、ブレストセンター入口わきの台の上に、季節のディスプレイが登場する。もとは、患者さんやセンターゆかりの人々から贈られたクラフト作品をピノコさんが季節ごとに飾っていたものだが、それが評判を呼び、気がつけば、ひと月ごとの模様替えに変わっていた。

(ニルバ、ちょっと来て)
ある日、午前の院内周遊旅行からもどったピノコさんが、空の書類入れをもったまま手招きするので、肩にぴょんととびのり入口に出てみると、ピノコさんとテラスちゃん手作りの折雛のわきに、バラの形の折花が数個かざられていた。折り紙で作られたものではなく、あきらかに何かの配布物の裏紙を利用して折られたものである。

「ときどき、こうしてアイテムが自然に増えるの。『まごころの連鎖』ね」
うれしそうにそうつぶやいたピノコさんは、今月も、菓子の包装紙や箱をベースにディスプレイを工夫しつつ、さいごに少しだけスペースをあけておくことを忘れない。

「まごころ」を引きだす、創意の源のスペースである。