ヴァレンタインデーのつぶやき

年に一度、かえるながらニルバもドキドキするその日、うらやましいかな、両腕からあふれんばかりの包みを抱えたガチャピン先生が、医局にとびこんでくるなりつぶやいた――「チョコレートって、義理でもやっぱりうれしいね。僕もおじさんになったな」

ニルバと顔を合わせて笑みをうかべたピノコ秘書が、それをうけてつぶやく。
「私も今年、いくつかにかぎってお渡ししたんですけれど、あげ方とか、遠いかなたの記憶で忘れてしまって、妙にどぎまぎぎしてしまいました。それはもう、相手の方に誤解されそうなくらいに」

「いいことだよ。人生に、すこしは花がないと」
ガチャピン先生の粋な切り返しに、チョコのおこぼれをもらいうけながら、ニルバも横で大きくうなづく。

子育て世代も中高年世代も、「青春」をかえりみつつ、ひとりの人間(あるいはかえる)にもどって大きな意味での愛について考える日――それが、聖ヴァレンタインデ―なのかもしれない。