続・花の連鎖
立秋もとうに過ぎたというのに外は朝からカンカン照りという午前、あわただしく外来診察をこなすテレサ先生が、診察室から顔を出してピノコさんに手招きした。
パソコンを打つ手をとめ、いそいで戸のすきまから室内にすべりこんだピノコさん。「あなたなのね〜」という声とともに、戸のすきまからピノコさんの足が小刻みに出たり入ったりするのが見えたので心配になり、机の上で助走をつけて背後から肩にとび移ると、正面に、目をうるませながら「ハグしていい?」と両腕を前へのばして近寄ってくる女性の姿が目にとびこんできた。
かたわらには、オーラ全開の様相でほほえむテレサ先生の姿がある。状況もつかめぬままビッグ・ハグされたピノコさんだったが、興奮の時が過ぎるやいなや、女性はせきを切ったように語りはじめた。
「ブレストセンターの前の飾りをつくってくださってる方ですって? 会いたかった〜ファンなの。いつも癒されています。このまえなんて、治療と診察の合間にタワーのコンビニにいったら、クーポン券が使えないっていわれて落ち込んだの。それで、『はやくいい“氣”をもらえるブレストセンターに行こう』って思って、ここへきてあの飾りの前にすわってじっと見てたら、ほんとうに元気が出たわ。病気と闘ってると、ささいなことで落ち込むから、ああいう心が感じられるものに出会うとほんとうに救われるの。ありがとう」
テレサ先生は、花が咲いたような笑顔をとおりこし、花吹雪が舞うようなしっとりとした笑顔をみせる。患者さんも、自身でふりまいた花びらが、涙という湿り気で全身にくっついてしまったようなあでやかさ。そして、われらがピノコさんも……