【Report】第48回米国臨床腫瘍学会

<6月1日〜5日、第48回米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology 48th Annual Meeting 2012)in イリノイ州シカゴ>

米国腫瘍学会は毎年6月初めに開催される.ここしばらくはシカゴで行われることが決まっているようである.この学会は腫瘍関係の分野ではおそらく世界で最も有名であり,世界中からさまざまな分野の腫瘍医が集まってくる.時にこれからの標準治療を大きく変えるような内容も含まれており,注目度は高い.それだけ参加者も多く,日本の先生方もたくさんみかけた.私は今回初めて参加した.

会場となっているマコーミックプレイス コンベンションセンターは,アメリカ最大であり,さらに拡張しているとのことである.会場内はとても寒く,上着を着ていないととても耐えられるものではない.日本の節電や省エネは何のためにあるのか,疑問を感じてしまうほどである.

以前にMDAnderson Cancer Centerを見学したとき,やはり施設内が寒く,それはなぜかと尋ねたところ,冷やすことでカビや細菌の発生・増殖を抑え,建物の老朽化を防いでいると誰が言っていた.そのときは何となく納得したのだが,今考えるとやはりしっくりこない.この時期のシカゴは決して暑いわけではないのだ.

会場の裏は,ミシガン湖でこれがまたとてもきれいだった.湖畔で休んだり,寝そべっている医師もいた.

発表内容をみてみると,乳癌関連がやはり一番多いようである.今回できるだけ演題を見逃さないように必死になってポスターや口演を聞いたが,私個人としてはあまり大きなトピックスはなかったように思う.一応最も注目を浴びたのは,T-DM1という薬剤で,これは抗がん剤ハーセプチンを1つにした複合体である.これによりHER2陽性乳癌細胞を効率よく叩こうというものである.T-DM1がラパチニブ(商品名:タイケルブ)とカペシタビン(商品名:ゼローダ)を組み合わせた治療より効果が高く,副作用も低かった.T-DM1はいずれ本邦でも早期承認の方向で申請されるのだろうと思う.

私はというと,風邪気味の体で行ったものだから,飛行機内でも会場でも咳を抑えることができず,周りに迷惑をかけた.どうも体調が悪く,今一つシカゴを楽しめなかったというのが本音である.

しかし走れば治るだろうというわけのわからない発想で,朝方走ってみると,景色もよく,その間はとても気持ちよく何故か咳はでなかった.しかし会場に行くと急に疲れが出てくるありさまだった.

ほとんど観光もしなかったのだが,夜シカゴピザという妙に厚手の名物を食べに行った.期待していなかったのだが,これが結構おいしかった.おそらく有名な店だったと思うが,最終日に行った別の店ではそれほどでなかったことから,店によって大分味が違うのだとわかった.

今回良かったことは,久しぶりにMDAnderson Cancer Centerに留学中の後輩と会って飲んだことと,やはり腫瘍内科を目指していて頑張っている後輩の話を聞いて,とても頼もしいと思ったことだ.日本の若手がこれからもどんどん伸びて活躍してくれることを心から期待したい.あっ,私も若手だった.頑張ろう!
(by ランナー)