生きた有機体として(1)

キリスト教の愛の心が
人の悩みを救うために働けば
苦しみは消えて
その人は生まれ変わったようになる
この偉大な愛の力を
だれもがすぐわかるように
計画されてできた生きた有機体が
この病院である

当ブレストセンターが所属するL病院の創設者、T博士の言葉である。

かかる理念に引き寄せられ、2009年、互いに励ましあい、医師として15年間研鑽をつんだ米国から帰国した1組のカップルがいた。妻は外科特別部門のセンター長となり、夫は抗がん剤治療を行うセンターの長に着任した。

「毎朝、2人で『癒しの器として私たちをもちいてください』って祈るの」
そして並んで月島大橋を渡り、対岸の病院でそれぞれの持ち場つく、と外科医の妻は話す。

「僕が抗がん剤をかけて極限まで小さくしたものを、彼女が手術でとり去る。また、彼女がとり去ったあと、再発を防ぐための治療を僕が行う。僕らは一対として機能しているんです」
病院を訪れるインタビュアーの質問に、内科医の夫は、そうこたえて照れたように頭をなでる。

誰あろう、われらがブレストセンター長テレサ先生と、オンコロジーセンター長クルーニー先生夫妻の実話である。