いずれリニアか新幹線

「できる人は仕事がはやい」といわれるが、患者さんの心のケアを業としているレノン先生は、その筆頭格のような人である。

メールの返信やコールバックはもちろん、歩くのもはやければ、食べるのもはやい。業務上の判断や資料をまとめあげる速度ときたら、それこそ「光速」の世界である。

ある日、いつもの「瞬間移動」のさなか、”ピノコズ・カフェ”に立ち寄ったレノン先生に、医局に居合わせた若手ドクターらから次々に質問の矢が飛んできた。

つかのまコーヒーを味わいながら、右に左に質問を切り分け、理路整然と的確な順序と手法で回答していくレノン先生――さいごに顔を出したネッコ先生につれられて診察室へ移動する道すがら、逆にレノン先生から質問をうけたネッコ先生が「あ、う〜ん……」と言葉につまったとき、レノン先生は間髪入れず、たたみかけた。

「ネッコ先生、『う〜』っていって『ん』なんていっている時間はないんだよ。僕だったらその間にびゅーっっとあっちの果てまで行っちゃうよ」

さらに、そのやりとりを「もう1台の超高速列車」を思いうかべながら可笑しく聞いていたニルバとピノコ秘書の心の中を代弁するがかのごとく、レノン先生はつづけた。

「僕とか、テレサ先生だったらね!」

その瞬間、くしゃみをおさえきれなかったであろうわれらがボス、テレサ先生が手術中でないことを願わずにはいられない、ニルバとピノコ女史であった。