芸術の秋に

病院周辺の銀杏の葉が黄色く染まるのを合図に、今年もわれらがブレストセンターに「学芸会」シーズンが訪れた。恒例の、患者さんとの交流会「スマイルパーティー」の準備である。

ブレストセンターでチラシを見て、ドクターやナースに誘われて、あるいは患者さん仲間から口コミによりその存在を知ってはじめて参加した人は、その中身に一様に驚嘆する。それもそのはず、休日に行われるこのパーティーでは、ふだんは診察室や病室でしかめっ面をしているドクターやナースが、白衣を脱ぎすて、笑顔で歌ったり踊ったり、果ては走ったり(?!)までしてしまうのだ。

「すべては患者さんのため」

この、たった一つの強い思いのもと、どんなに診察や手術や講演・学会準備に忙しくても、皆、その合間をぬって企画を立て、スライドやプログラムを作り、朝に夕に踊りや合唱の稽古に余念がない。当日は、開始予定時刻のはるか前から集まり、協同で椅子や机をならべる。この日ばかりはドクターもナースもセンター長もPh.D.もない。「ブレストセンター」と書かれた揃いのTシャツを着て、誰もかれも対等に、「患者さんのため」に力を結集させるのである。

そこまでスタッフを奮い立たせる基盤となっているのは、初代ブレストセンター長N先生の熱き思いにほかならない。「年に1回、患者さんとの交流の会をもちたい」――4年前、ブレストセンター開設当初の大きなうねりの第一波がおさまったとき、N先生がつぶやいた。そのつぶやきをうけ、とりあえず、N先生が命名された「スマイルパーティー」なるものの日どりと開催場所が決まった。

企画担当者として指名をうけたのは、TS先生とナースリーダーのマスコさん。しかし、N先生はただ「交流の会」と繰り返されるのみで、具体的な指示はない。そこへ、現センター長のテレサ先生が米国から帰国し、チームに加わった。米国仕込のパーティー術を知るテレサ先生が援護射撃する形で一同知恵をしぼり、おそるおそる踏み出したのが第1回のパーティーだった。

そのスマイルパーティーも、今年で4回目となった。おそるおそるの1歩は、今やスタッフ・患者さん双方の家族や友人たちまでを巻きこみ、芸術の秋に大きなまごころの花を咲かせている。

(本年のスマイルパーティーは、23日(祝)に開催されました。後日、ラブプー先生より報告します)